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曲と線を“ひく”ものさし、モノサシスト


皆さんは、ものさしといえばどのような使い道を思い浮かべるでしょうか。多くの人は長さを測ったり、まっすぐな線をひいたりといった用途を思い浮かべることでしょう(厳密には用途ごとに定規とものさしという呼称を区別するようですが、ここでは割愛します)。

上に書いたように、基本的にものさしは文房具や計測器として使用されることが主でしょう。しかしながら、それらの観点と全く異なる用途でものさしを用いるという文化が存在します。なんと、楽器として使うのです。


論より証拠ということで、実際に私が演奏したものを見ていただきましょう。ハチ(のちの米津玄師)によるボカロ曲「マトリョーシカ」です。ギターやベースをちゃちくしたような、独特な音が鳴ります。





ものさしを演奏する人々は「モノサシスト」と呼ばれ親しまれています。大本は海外の動画(https://www.youtube.com/watch?v=Gx2E6YMSFP8)ですが、それに刺激を受けたRAZOという方が日本のニコニコ動画上で広めました。現在でもモノサシストと検索すると、YouTube上やニコニコ動画上で多くの演奏動画を視聴することが出来ます。


演奏方法を説明しましょう。ものさしを机から一部はみ出させ、その部分を指で弾くことで音を出すことが出来ます。さらに、このはみ出る長さを変更することで音の高さを変更することもでき、長さをどんどん変えながら弾くことで音程のある曲を演奏することが可能となります。


上図のように、ものさしが机に固定された部分を固定端、先端を自由端とした波が生じます。おおよそ、振動数  、442Hzのラ音を基準とした音階はとなります。つまりは短くするほど高い音になるということです。


実際に演奏する際にはいくつか注意点があります。

第一に、きれいな音を出すためにはモノサシのテーブル側をしっかりと手で押さえるのが望ましいです。ここがいい加減だと出る音がぶれてしまいます。

第二に、ものさしはステンレス製のものが望ましいです。樹脂製のものだとしなりが弱く、破損しやすいです。また、百均のステンレスものさしでは分厚すぎるので、よりよい弾き心地を求めるならシンワなどから出ているステンレス直尺(15cmのもの)をお勧めします。

第三に、ものさしの角で指などケガしないよう注意が必要です。指で素早く弾くため、角でケガしやすいです。モノサシストの中にはわざわざ角を研磨する人もいるくらいです。

ちなみに、注意点というほどでもないですが動画内でも使用しているように下にガラス製鍋敷きを敷くと音がきれいに出ると評判です。


上まででは、モノサシストというものの概要を書き連ねてきました。それでは最後に、モノサシストというものにどんな魅力があるのか、私なりに語っていこうと思います。

まず、その手軽さが挙げられます。他の楽器は金額的にも決して安いとは言えないものが多く、専門店まで買いに行くなど大変です。それに比べモノサシストは机とモノサシというどこにでもある設備からすぐ始められます。学校でも出来てしまうので、話題作りや暇つぶしにもなります。(くれぐれも授業妨害はしないように…)

次に、意外性や話題性に富んでいます。文房具としてしか見られていないものさしが、まさか楽器になるなんて思いもよらないでしょう。自己紹介等での一発芸にもぴったりです。

感覚で演奏できるので、楽譜を読めなくても大丈夫というのも大きな魅力です。実際自分は未だ五線譜がさっぱりですが、問題なく弾けています。

そして何より、単純な仕組みであるが故の奥深さがあります。身もふたもない良い方をするとただの金属板であり、演奏者の操作の自由度が大きいです。どのくらいはみ出させたらどんな高さの音が、どのくらい弾けばどんな大きさの音がなど、感覚に叩き込むことでどんどんものさしを飼い慣らしていく楽しさがあります。


ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。モノサシストというものに興味をもってはいただけたでしょうか?自分もやってみたい!と感じたのであれば、お手元のものさしを取り出しましょう。無ければお近くの文具屋なりに駆け込みましょう。音程を掴むのは少し練習が要りますが、音を出すのはちょっとはじくだけで簡単です。まずはチューリップから取り掛かってみるのはいかがでしょうか。


参考サイト

ニコニコ大百科モノサシストページ



文具研究同好会 濱田

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